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高齢者の散歩は何歩から?無理なく続ける目安と転倒を防ぐ準備

こんにちは、作業療法士の山口健一です。高齢者の散歩を支援するとき、「何歩歩けばいいですか」と聞かれることがあります。私が大切にしたいのは、本人の体調と歩ける力に合わせて、無理なく動く機会をつくることです。

歩けない日があっても、本人を責める必要はありません。この記事では、歩数の研究をどう受け止めるか、安全に始める準備と声かけを整理します。

運動は体調と安全を確かめ、本人に合う方法から取り入れます。

6,000~8,000歩は全員のノルマではない

2022年に発表された15の研究・47,471人をまとめた分析では、60歳以上の人は、歩数が多いほど死亡リスクが低いという関連が、おおむね1日6,000~8,000歩付近まで見られました。

これは観察研究の結果です。歩数だけで寿命が決まるという意味でも、その歩数まで歩かなければ効果がないという意味でもありません。研究概要(Paluchら、2022年)

普段あまり歩いていない方に、明日から8,000歩と求めるのは負担になり得ます。まずは安全にできている移動を確認し、必要なら専門職と相談して、少しずつ調整しましょう。

国の目安も「個人差に合わせる」が前提

厚生労働省のガイドは、高齢者に歩行相当以上の身体活動を1日40分以上、1日の合計歩数では約6,000歩以上を目安として示しています。同時に、強度や量を個人差に合わせ、目安に届かなくても少しでも動くことを勧めています。身体活動・運動ガイド2023 高齢者版

この目安を、要介護の方や病気のある方へそのまま当てはめることはできません。すでに医師やリハビリ専門職から運動量・歩行方法の指示がある場合は、それを優先してください。

散歩前に確認したい4つのこと

暑さ・寒さ・雨などに合わせ、屋外にこだわらず室内での移動へ変えることもできます。「予定したから必ず歩く」より、その日の状態を優先しましょう。

本人の楽しみを目的にすると誘いやすい

「運動不足だから歩きましょう」だけでは、気持ちが向かないこともあります。歩くことを本人の希望と結びつける声かけを考えてみてください。以下は支援の例です。

本人の関心 声かけの例
花や季節が好き 玄関の花を一緒に見に行きませんか。
外の様子が気になる 窓のところまで行って、今日の空を見ましょうか。
疲れるのが心配 途中の椅子で休めます。そこまで一緒に行きましょうか。

断られたら理由を聞き、時間や方法を変えます。「行きたくない」をすぐに意欲の問題と決めず、痛み、疲れ、不安、排泄の心配などがないか確認します。

歩くだけに偏らず、体に合った運動を組み合わせる

国のガイドでは、歩行などに加え、筋力・バランス・柔軟性を含む運動も勧めています。転倒が心配な方は、歩く距離を増やす前に、安全な動き方を理学療法士や作業療法士などに相談してください。

歩くことが難しい場合も、座った姿勢でできる動きや、介助を受けて外の景色を楽しむなど、参加の形はあります。歩数で人を比べず、本人ができることと楽しめることから考えましょう。

途中で調子が悪くなったら中止する

胸の痛み、強い息苦しさ、めまい、急な体調不良があれば運動を中止し、医療的な判断を受けてください。症状が強い、続く、意識がおかしいなど緊急性が疑われる場合は、救急要請を優先します。

散歩を続けるために、毎回の歩数だけでなく「どこまで行けたか」「途中で疲れたか」「翌日に負担が残ったか」も簡単に共有すると、次の調整に役立ちます。

関連して、高齢者の運動と認知症予防についての考え方、本人の気持ちを尊重する声かけもご覧ください。

元記事:高齢者こそ知ってほしい「歩行」の科学(山口健一)。参考資料は本文中に記載しています。