高齢者の運動と認知症予防|散歩・体操を無理なく続けるポイント

こんにちは、作業療法士の山口健一です。「認知症予防のために運動を始めたい。でも、何をどのくらいすればよいの?」と迷う方へ、散歩や体操を生活に取り入れる考え方を整理しました。

運動は健康づくりの大切な一部ですが、運動だけで認知症を必ず防げる、治せるとは言えません。大切なのは、強い負荷を急にかけることよりも、その人の体調に合う方法を続けることです。

認知症予防と運動について、分かっていること

WHOは認知機能の低下や認知症のリスクを減らす取り組みの中で、身体活動を増やすことを取り上げています。これは「歩けば誰でも認知症にならない」という意味ではありません。運動だけに期待を集中させず、生活全体を見直すための一つの手がかりとして受け止めましょう。

出典:WHO「認知機能低下・認知症のリスク低減ガイドライン」第2版

「アセチルコリンが増えるから効く」と言い切らない

元のnoteでは、運動と脳内のアセチルコリンの関係を中心に紹介しました。ただし、運動の仕組みに関する研究と、人にどの程度の効果があるかは分けて考える必要があります。

「筋トレをすれば脳の物質が増え、認知症が改善する」という一直線の説明は避けたいところです。日々の運動では、歩きやすさや疲れ方、本人の楽しさなど、生活の中で確かめられることに目を向けます。治療中の方は、運動を薬や受診の代わりにしないでください。

始める前に確認したい3つのこと

運動前は体調、安全な場所、小さく始めることの3点を確認する解説図
運動量を増やす前に、その日の体調と環境を確認します。

1.いつもと違う体調ではないか

痛みや疲れ、ふらつきなどがある日は無理をしません。持病がある方、転倒が心配な方、運動制限を受けている方は、始める前に主治医や担当のリハビリ専門職へ相談しましょう。

2.安心して動ける環境か

床の物を片づけ、段差や足元、いすの安定を確認します。周囲に人がいるだけで安全とは限りません。必要な介助や見守りの方法も確認してから始めます。

3.今の体力に合う量か

厚生労働省の運動ガイドでは、個人差を踏まえた調整や安全への配慮が大切にされています。まずは普段の生活で無理なくできる動きから。回数や時間の目標を優先して、疲れや痛みを我慢する必要はありません。

参考:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

散歩・体操・筋トレをどう選ぶ?

散歩:歩行が安定している方なら、なじみのある安全な道を候補にします。「遠くまで行く」より、途中で休める場所や帰りの余力を考えましょう。天候や暑さにも合わせて変更します。

体操:座って取り組む方法も選択肢です。全員に同じ大きさや速さの動きを求めず、痛みのない範囲や本人の反応に合わせます。

筋力トレーニング:マシンを使えば自動的に安全になるわけではありません。慣れない運動は、姿勢・負荷・回数を専門職と相談して決めます。

歩きながら計算する前に、安全を優先

体を動かしながら別の課題を行う方法もありますが、歩くことに不安がある人へ、いきなり計算やしりとりを重ねるのは避けたいところです。まずは歩行を優先し、会話や問題は立ち止まってから、または座って楽しむ方法を考えます。

座って楽しむ題材を探している方は、高齢者向けの言葉の脳トレもご覧ください。ゲームは楽しみの選択肢であり、認知症の診断や治療を行うものではありません。

続けるために、記録するのは「できた量」だけではない

「今日は疲れが残らなかった」「好きな景色を見られた」「次もやってみたいと言ってくれた」。こうした様子も、次回の内容を考えるヒントになります。運動を義務にしすぎず、本人が選べる余地を残しましょう。

この記事は、山口健一の元のnote記事をもとに、健康情報の表現と実践時の注意を整理し直したものです。文・構成:作業療法士 山口健一。

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ABOUTこの記事をかいた人

現在、デイサービスで作業療法士として働く傍らセミナー講師として県内外で活動中。アイデア1つで生活は豊かになるがモットーです。月刊デイやリハージュや活動と参加のリハビリ・訓練アイデア集に自身の生活改善のアイデア・リハビリ・レクリエーションについて寄稿。このサイトが、あなたの新しいアイデアにつながることを願っています。