「利用者さんへのタメ口が気になるけれど、職員にどう伝えればいいのか」。介護施設やデイサービスで、そんな悩みはありませんか。
「敬語を使って」と注意するだけでなく、よく使う言葉を一緒に言い換え、本人の受け止め方まで振り返る。これが、接遇を日々のケアに結びつける出発点です。
作業療法士の山口健一です。この記事では、呼び方から職員同士の共有まで、取り組みやすい5つの方法を紹介します。会話例は説明のために作成したもので、実際の利用者さんとのやり取りではありません。
目次
親しみと、子ども扱いは分けて考える
長く関わる相手には、自然とくだけた表現が出ることがあります。ただ、「相手が何も言わないから大丈夫」とは限りません。言葉の丁寧さだけでなく、声の大きさ、表情、話を聞く姿勢も含めて確かめます。
一方、難しい敬語を重ねればよいわけでもありません。短く分かりやすい言葉で、一人の大人として接することを基本にします。本人の希望する呼び方や話しやすい距離感も、チームで共有しましょう。
1.呼び方は本人の希望を確かめる
「おじいちゃん」「おばあちゃん」と一括りにせず、名前に敬称を添えることを基本にします。「どのようにお呼びしたらよいですか」と確かめられる場面では、本人に聞いてみましょう。
呼び方だけ丁寧でも、「○○さん、早く座って」では急かす印象が残ります。名前の後に続く頼み方も、一緒に見直します。親しみを込めたつもりのあだ名も、職員側だけで決めないようにします。
2.よく使う言葉を、短い依頼に置き換える
まずは一日に何度も使う言葉を、三つほど選びます。長いマニュアルを暗記するより、使う場面を思い浮かべて練習すると取り組みやすくなります。
| 見直したい言い方 | 言い換え例 |
|---|---|
| 早く座って | こちらの椅子に座りませんか |
| 待って | 少しお待ちいただけますか。準備をしてきます |
| 食べて | お食事はいかがですか |
| やっておいて | こちらをお願いできますか |
言い換えは、その場で必ず使う決まり文句ではありません。拒否や戸惑いがあれば理由を聞き、必要な支援を考えます。緊急に危険を伝える場面では、安全が伝わる短い声かけを優先します。
3.職員同士も、依頼の内容と感謝を伝える
利用者さんの前でだけ取り繕うより、普段から「何をお願いしたいか」「いつまでか」を伝える練習をします。「それ、やっといて」では、相手が内容を判断しなければなりません。
職員への例:「レクが始まる前に、椅子の間隔を一緒に確認してもらえますか」「準備を手伝ってくださって助かりました」
上司や先輩も含めて同じ基準で取り組むことが大切です。新人だけに敬語を求める形にすると、何を基準にすればよいか分かりにくくなります。
4.振り返りは、一場面だけで始める
終業時などに30秒ほど、「今日、伝わりやすかった声かけ」と「次に変えてみたい言葉」を一つずつ振り返る方法があります。30秒は取り組みを小さく始める目安で、効果を保証する時間ではありません。
振り返りの場で、職員名や利用者の情報を不必要に広めないことにも気をつけます。共有が必要な事実は職場の手順に沿って扱い、みんなの前で責めるための材料にしません。
5.よかった対応は、具体的な行動で伝える

「接遇がよかった」だけより、「返事を待ってから説明していましたね」のように、実際に見た行動を伝えます。「本人が安心した」と内面まで決めつけず、表情や言葉など確認できたことを添えると共有しやすくなります。
褒めるだけで問題が解決するとは限りません。威圧的な対応など見過ごせない場面は、本人の安全を確保し、職場の報告・相談の手順に沿って対応します。
接遇改善を、職員個人の性格だけの問題にしない
急ぎの介助が重なる、説明の時間が取れない、休憩が取れていない。そうした背景があるなら、言葉遣いの指導と一緒に業務の負担も見直す必要があります。丁寧な言葉を使うことと、働く環境を整えることを一緒に進めます。
言葉遣いだけで認知症が改善・悪化すると断定することはできません。このページでは、診断や治療の話ではなく、尊重が伝わる日常のコミュニケーションとして紹介しています。
声かけの例を増やしたい方は、高齢者への自然な褒め方・感謝の伝え方もご覧ください。




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